研究概要
有機分子の多彩な機能を引き出すことを目的に、新たな分子の合成やその合成法の開拓を行っています。有機分子に機能を持たせるためには、官能基の導入が必要になります。その簡便な導入法として、従来にない簡便な酸化手法を駆使した高機能材料の開発や複数の官能基を併せ持つ(多官能性)ビルディングブロックを活用した合成法の開発に取り組んでいます。
1.植物由来プラスチックの表面機能化による接着制御
石油由来ポリマーの植物由来ポリマー(バイオマスプラスチック:BP)への置き換えはCO2排出の大幅削減を始めとする環境負荷の低減の有効な手段と考えられますが、BPは物性・機能の面で劣る場合が多く、普及があまり進んでいません。我々は、側鎖の化学修飾が極めて困難なBPに対し光触媒による官能基化技術を適用することで、接着制御を達成し、BPの実用化を押し進めています。
2.新奇光酸化法を用いたバイオマテリアル創成
Coming soon
3.簡便かつ強力な酸化手法を用いた機能性材料の開発
Coming soon
4.アザフルオレノンの系統的合成と機能性材料への活用
これまで注目されていなかったアザフルオレノン誘導体の系統的な合成を行ない、その機能性材料としての可能性を探る。近年、π共役系分子がその特異な電子的・光学的特性から機能性材料としての応用が期待され注目を集めている。また、これらに窒素などのヘテロ原子を組み込むことでその電子的・光学的特性を変化させる手法が数多くなされているものの、アザフルオレノンのようなヘテロ芳香族カルボニル化合物に関しては合成法の乏しさなどからこれまで検討がなされていなかった。
5.二官能性N-アシルイミンを活用した人工アミノ酸の簡便合成
α-アミノ酸誘導体は最も重要な化合物群の一つであり、その不斉合成に関する研究は今なお、盛んなトピックであり続けている。ここで、炭素―炭素結合形成を伴うα-アミノ酸誘導体の不斉合成手法において、求核性の低い基質を用いる場合に困難が存在し、有用化合物を得る障壁となっている。そこで、二官能基化N-アシルイミンを利用して、困難を分割することによる、新奇なα-アミノ酸の合成法の開発を目指して研究を行っている。二官能基化N-アシルイミンはイミン炭素上の二つの電子求引基(エステル基)により高い反応性を持ち、活性化を必要とせず種々の求核剤と反応し、付加体を与える。また、このエステルは付加反応後にエナンチオ選択的な脱炭酸により、不斉を導入する鍵官能基ともなりうることから、二段階でのα-アミノ酸誘導体の不斉合成が可能となる。
6.ヘテロ原子を環内部に有する新奇π共役分子の開発
ヘテロ原子を環の内部に導入した拡張π共役系分子を合成し、刺激応答性の付与を指向した新奇な光学材料の開発を目指す。近年、電子材料や光学材料として高度な共役系を有する芳香族化合物が注目を集めている。その中でヘテロ原子を共役系に導入し、電子的・光学的特性を付与・変化させる試みが数多くなされている。しかし、環の内部にヘテロ原子を導入することで共役系から隔離させた芳香族化合物は、これまでほとんど合成されていないことから、ヘテロ原子を利用した機能性の付与は検討されておらず未知の分野である。